Jones式で言うところの[i]は、IPAでは/i/もしくは/ɪ/と考えてください。
[i:]はそのまま/i:/と考えて良いでしょう。

/i/と/ɪ/は実際は微妙に異なる音です。ただ、単語を発音するときは舌が自然とその位置におさまるのでこれらの違いを意識する心配はありません。たとえばkit(道具一式)は/kɪt/と発音し、happy(幸せ)は/hæpi/と発音します。このとき、/i/と/ɪ/の違いは意識せずとも自然に表現できているはずですので、深く考える必要はありません。

それをふまえて、この音(/i/, /ɪ/)は、
・唇を自然に開いた(もしくは横に開いた)状態で
・舌の最も高い位置が舌先付近にくるようにし
・舌と上あごの感覚を一番狭くして
発音する音です。

ちなみに言語学的には、/i/は『非円唇・前舌・狭母音』といい、/ɪ/は『非円唇・前舌め・広めの狭母音』という名前がついています。パッと見ると難しそうな名前ですが、なんのことはなく、上記三点を省略して表現したものです。

/i:/は/i/の音を伸ばしたものです。記号 : は「伸ばす」ことを表しています。このように伸ばして発音する母音のことを『長母音(long vowel)』といいます。対して、/i/や/ɪ/のように短く発音する母音のことを『短母音(short vowel)』といいます。

舌の位置のイメージ図です。
これはあくまで位置関係のイメージですので、実際は音の方を大切にしてください。
vowel-i

[i]の発音(短母音/ɪ/と長母音/i:/)

短母音の/ɪ/です。さあやってみましょう。良く聞いて、私の後に続いて発音してください。この音が含まれるのは、たとえば、kit、bid、hymn、minute。さあ私の後に続いて発音してください。kit、bid、hymn、minute。いいですね。短い/ɪ/と、長い/i:/は区別が難しいときがあります。では、長い音と短い音をそれぞれ入れ替えた単語を言いますので、良く聞いてくださいね。hit、heat、....、will, wheel。では、私の後に続いて発音してください。

ご参考までに、動画で紹介された単語を以下にリストアップしました。発音記号はCambridge Dictionaries Onlineを参照し、英国式発音と米国式発音を併記しました。サラッと見る程度に。

/ɪ/の単語英国発音米国発音
kit(道具一式)/kɪt//kɪt/
bid(宣言する)/bɪd//bɪd/
hymn(讃美歌)/hɪm//hɪm/
minute(分)/ˈmɪnɪt//ˈmɪnɪt/
---
hit(打つ)/hɪt//hɪt/
lip(唇)/lɪp//lɪp/
sick(病気の)/sɪk//sɪk/
will(意思)/wɪl, wəl, əl//wɪl/

/iː/の単語英国発音米国発音
heat(熱)/hiːt//hiːt/
leap(跳ぶ)/liːp//liːp/
seek(捜す)/siːk//siːk/
wheel(車輪)/wiːl//hwil, wil/

ちなみに記号「ˈ」はストレス(アクセント)が置かれる音節の「始まり」を示しています。たとえば/ˈmɪnɪt/は最初の[ミ]にアクセントがあります。また上付き文字は微妙にその音が入るイメージです。たとえば/wəl/の/ə/は、əの音が少しだけ入るか、口が少しəの形になります。

[i:]の発音(長母音/i:/と短母音/ɪ/)


音のところだけ真似してみてください。今度は先ほどの動画とは逆に、長母音が先で短母音が後です。

/iː/の単語英国発音米国発音
fleece(羊毛)/fliːs//fliːs/
sea(海)/siː//si/
machine(機械)/məˈʃiːn//məˈʃiːn/
---
litre=liter(リットル)/ˈliːtər//ˈliːtər/
cheap(安い)/tʃiːp//tʃiːp/
feet(foot+s)/fiːt//fiːt/
he's(he+isの省略形)/hiːz//hiːz/
peach(桃)/piːtʃ//pitʃ/
sheep(羊)/ʃiːp//ʃip/

/ɪ/の単語英国発音米国発音
litter(散らかしたもの)/ˈlɪtər//ˈlɪtər/
chip(かけら)/tʃɪp//tʃɪp/
fit(ふさわしい)/fɪt//fɪt/
his(彼の)/hɪz//hɪz, ɪz/
pitch(投げる)/pɪtʃ//pɪtʃ/
ship(船)/ʃɪp//ʃɪp/

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